「新横浜ラーメン博物館」は「昭和」をテイストにされていますが、
その理由は?

話し合いで「ラーメンをコンセプトにしよう」という話になったとき、
最初は札幌のラーメン横丁のようなものを創ろうという
話になっていました。
でも僕の中でのラーメンのイメージは「チャルメラ」だったんです。
小さい頃に友だちの家で遊んでいるとだんだん夕焼けになってきて、
「チャララーララ、チャラララララー」や、
豆腐屋さんの「とーふー」などが聞こえてきてたんですよ。
すると僕のお母さんが「高徳!ごはんよー」って言っている・・・
そんな雰囲気がラーメンから連想できました。
ということは「僕にとってのラーメンの起源はいつぐらいかな?」
と紐解いていくとやはり昭和の時代になるのではないか
と思ったんです。
「星の王子さまミュージアム」のときと同様、
日本の中でも「ALWAYS三丁目の夕日」のような昭和の世界観の中に
どうやったらタイムスリップできるかを考え、
シチュエーションを作りました。
僕の中の「こだわり」みたいなもので徹頭徹尾追求していきました。
昭和を原体験した人たちからすればある種記憶の断片であり、
メモリーになりますね。
オープンしてから昭和の時代を体験してない人たちにも
「昭和ってこんな(時代)だったのか」って結構喜んでもらいました。
若者は昭和の時代を見たことがないから、
それがファンタジーになっているということに
オープンしてから気づきました。
同じものを全く違う価値観で見られるところが
面白いなと感じましたね。
やはりこだわりを持って、「ずっと入り込める空間」を創るのが
すごく大事だと思いました。

イマジネーションから、ここまで展開できるのは、
いろいろな経験が活きている訳ですか?

それはその通りだと思いますよ。経験しないとわからないからね。
本を読むことも、絵を見ることも、ご飯を食べることも、
そして世界中の色々なところを見るのもすごく大事だと思いますよ。
僕は35~40後半くらいまで、年間の三分の一は
海外へ行っていたんです。
世界中のおいしいものを食べたり、
ホテルオタクなのでホテルに泊まるのを楽しんだりとか、
あとリゾートオタクでもありますね。
みんなが絶対に喜ぶところにしか行っていません(笑)。
そういうのが僕の中に残っているんですよ。
それとディズニーが僕の思考回路でイマジネーションを
膨らませるための「素材」になっていることは間違いないですね。
だから料理とディズニーと、そして映画と・・・
あと迷路(メイズアート)ね。
迷路は学生の頃から描き始めたのだけど、
「まっすぐな道の先をちょっと見えなくして、
ここの世界とは違う世界を感じさせてあげる・・・」
という発想は、物事をどう面白くさせるかを考えるときの
原点になっています。


ダヴィンチの微笑



トマト缶



ポップアートキング



空間のデザインやプロデュースをされているときに
大変だと思うことはありますか?

プロデュースするというかプランを立てることに関しては、
全然大変じゃないです。極めて楽しい。
何に対してもイマジネーションが出てきて、
いくらでも描けるから全然苦だと思わない。
でもそれを現実の世界に置き換えていく、
例えばお金の問題だとか、細かい法的な問題とかが出てくると、
大変になってきますね。
もっと具体的に言うと運営サイドからの要求が出てきますよね。
その全てを僕がやるわけではないけれど、
細かいところまで全部をクリアにしていくというのは
本当に時間と手間のかかる話だと思いますよ。

やりがいを感じるのは、やはりその施設に来たお客様が喜ぶことですか?

そうだね、お客様が喜んでくれてリピーターに
なってくれることですね。
リピーターになるってことは
評価しているってことだと思うんです。
「NINJA AKASAKA」なんて一番顕著な例で、
前に来たお客様が今度は一番親しい人と来てくれるんですよ。
店に入ってく段階でのワクワク感やドキドキ感を
面白いなって思った時、今度は家族だったり、恋人だったり、
最愛の人と来ようって思うじゃない?
みなさんが一番「ハッピーだな」「わー!すごいな」と思ったことは
一番身近にいて言いやすい人に向けて口コミをするんですよ。
逆もあるよ、「サイテーあのバカ。」みたいな。(笑)
一番親しい人に告げるでしょ?

プロデュースをする上で大切だと思うことはありますか?

シンプルに言ったら、ヒットしないと意味がないことですよね。
自分のお金を出してプロデュースしたとしても、
お金を集めて何かをやろうとしたとしても、
いずれにしても集めたお金をどう回収してプラスにするか
というのを考えるのがプロデューサーの仕事だから。
ということは「ヒットするかしないか」ということは
一番重要な課題ですよね。
そう考えるとプロデュースをする人がアーティストもできたら
僕はベストだと思いますよ。
僕はたまたまプロデュースもアーティストも
両方ともやってしまうタイプで、それはそれで
器用貧乏だとも言えるから、良いのか悪いのかはわからないけれど。
本来クリエイターとしてガンガン行きたい気持ちはあるけど、
金銭的な部分が僕には見えてしまうんですよね。

最後に相羽さんにとって「プロデュース」とはなんですか?

プロデュースしているとは思ってなくて、
ライアントの要望に「反応している」だけなんです。
たまたま要望に応える中でプロデュースが見えてきちゃうんですよね。
おせっかいだから、「こうしたらもっと売れるんじゃない?」
「いやそうじゃなくてこうしたらいいんじゃない?」って
どんどん提案してしまうんです。
これが当たることもあるし、拒絶されることもあるけど。
僕の言う通りにやってくれれば絶対ヒットするのに!
と思う時もあるけど、人の考えも無視し続けられないから、
なかなかそうはいかないよね。
「自分だけの意見が絶対一だ」って思ってはいるけど、
それを主張した暁にはトラブルが起こりますよね。
だんだん大人になってきてあまりトラブル起こさないで
上手いことやろうとしていますよ。
でもどっかで「この方がいいんじゃないの?」
と言っているタイプです(笑)


海外で話題になっている立体アート


*『東京妙案開発研究所―
 「人がにぎわう空間」を創る発想力の秘密』
 日本経済新聞出版社 2010



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