今回は「新横浜ラーメン博物館」や
「箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアム」といった
数々の文化施設のプロデュースを手掛ける相羽高徳さんに
お話を伺いました。
プロデュースへのこだわりや空間創造についてなど、
お話しをいただきました。


【相羽高徳さんプロフィール】
1953年生まれ
株式会社グラフィクスアンドデザイニング代表取締役会長。
メイズ(迷路)イラストレーター、
空間プロデューサー、アートディレクター。
「新横浜ラーメン博物館」、
「箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアム」
といった文化施設や「NINJAAKASAKA」などの
飲食店のプロデュースを手掛ける。

「空間プロデューサー」「アートディレクター」とは
具体的にどのようなお仕事ですか?

デザインにまつわる、ありとあらゆることかな。
「文化施設」とか「飲食関係」とか、とりたてて
「これでなくてはならない」という考えは僕の中にはないんです。
むしろクライアントの依頼に「だったら、だったら、だったら・・・」
と反応している感じです。
もともとはイラストレーションやメイズアートを描いて
雑誌に出してもらったりしていました。
表現することに貪欲だったことには間違いないですね。

最初はイラストレーターとしてご活躍されていましたが、
空間プロデュースを始めたきっかけは?

クライアントからの依頼に反応してきただけで、
実は、自分で「空間プロデューサーになろう」
と思ったことは一度もないんですよ。
ただディズニーランドが死ぬほど大好きなんです。
キャラクターではなく、ディズニーランドの「パークのつくり」が
僕の頭の中にしっかり入っていて、僕なりに研究をしているんです。
たとえば「カリブの海賊」から見える一日中夜中のレストランが妙に
気に入って、こういった雰囲気を何かに使えないかな?とかね。
頭の中にある「これ面白いんじゃないかな?」という素材が
色々重なり合って、イマジネーションが高まり、
最終的に僕の提案がクライアントに喜ばれれば
形になっていくんですよ。
だから本当に「こういう仕事をやろう」とか
全然思ったことがないんです!

「プロデュース」という観点で何かこだわりはありますか?

こだわりは・・・こだわりの塊です。(笑)
まず一つは、自分の作らせていただいたデザインにしろ、
プロデュースしたものにしろ、関わったものが
絶対に成功しないと気が済みません。
クライアントに喜んでもらうのは当然で、
そのクライアントもビジネスで動いているので、
市場論理を理解しなければなりません。
一歩先を狙って「成功例をどう作るのか」というところに
「照準をあてている」ということですね。
みんながハッピーになるために絶対に
ビジネスとして形にしたいと思っています。
それに付随してくるのが「投資」と「利益」のバランスです。
「いくら掛けて、何年で回収するのか」という逆算論法が
頭に焼き付いています。
原価がいくらで、一個売れるといくら儲かるのか、
それが何十万個売れるのか、ということをシンプルに考えていくと
必然的に年間の売り上げが分かりますね。
そして、売り上げから経費を差し引くと年間の利益が見えてくる。
このように逆算して「これだったらこれができる」
と感覚的に言ってしまう癖があります。

もう一つは、クリエイティブのこだわりです。
クライアントやお客様の想像以上の世界を絶対に創りたい。
誰しもコストと時間に制約されていますが、
最終的にはそれを調節した中でクオリティを保ち、
プロフェッショナルとして納得できる「こだわり感」を
どこまでお客様に提供できるか、ということです。
創っている以上、自分自身が納得できないものを
外に出したくはないです。
大きくいうと、そういうのがこだわりかもしれませんね。


ビジネス的な収支計算などは学ばれていたのですか?

早稲田実業学校高等部の商業科出身だけど、
それは全然関係ないですね。
むしろ「どうしたら自分の仕事が来るのか?」
「どうやったらお客様が喜んでくれるのか?」ということを
試行錯誤し、知恵を使ってあみだしていく中で
ビジネスが見えてきます。
もし僕に天才的な能力があって、
かつ僕を信じて疑わない投資者がいたとして、
お金のことを何も考えずに好き放題やらせてくれれば、
それに越したことはないよね。
でも自分を客観的に見て、能力がちょっと抜き出ている部分も
あるけど、そこ以外はそれほどでもないなって思うから、
金銭的なことも自分でやってこざるをえなかった、
というのはあるかもしれない。
また、クライアントからお金のことまで
全権委任されることも多かったんです。

あとは人との巡り合いですね。
本当に一期一会で色々な人と巡り会って作ったネットワークの中で
「自分に要求されていること」にどう応えていくか、ということです。
ただ一つだけ言えるのは、
「思いはずっと思い続けている限り、通じる可能性がある」
ということです。
通じない人もいるかもしれないけど、カテゴライズされた職種でなく
「こんな表現をしたい」「こんなのが好きだ」
「こういう世界に行きたい」という思いをずっと念じていれば
間違いなくそこに行けるよ!

「箱根サン=テグジュペリ 星の王子さまミュージアム」の
プロデュースを手掛けた経緯はどのようなものですか?

きっかけは予ねてから知り合いだった鳥居明希子さん
(株式会社セラム代表)から依頼を受けたことです。
そのあと彼女と一緒にフランスへ行って、
サン=テグジュペリが生まれたところから
彼の親戚(貴族)の立派な館などを見ました。
そこで感じた「彼が生きていた感覚」みたいなものを
体で受け止め、それを表現して形にしていったんです。
館のデザインから展示方法まで、デザインに関するものは
全て僕が手掛けました。

施設のデザインには、どんなこだわりを持っていましたか? 

サン=テグジュペリの歴史をどこまで辿れるかというところですね。
全てを表現するのは無理だけど、
サン=テグジュペリのことを全く知らない第三者が見ても
「ほほーっ」と思えるような世界が創りたかったんです。
フランスで見た彼が小さい頃に住んでいた場所も
ミュージアム内に設置するなど、
彼の生きている臨場感を出せるようにと思いました。
箱根のど真ん中に彼が生まれたプロバンスや、
彼が毎日飲んだり食べたりしていた1930年代のパリの街並みを
表現し、お客様がその時代やその背景を体で感じて、
タイムスリップできればいいなと思っていました。

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