「音楽プロデューサー」と聞いて
あなたならどんな人を思い浮かべるでしょうか。
何をしていると思うでしょうか。
「音楽プロデューサー」という言葉の中には
いくつものプロデューサー像があります。
今回はクリエイターであると同時に、
プロデューサーとして活躍するYUNiSMさんを通して
ひとつのプロデューサー像を見たいと思います。

 

まず音楽プロデューサーとは何をしているのでしょうか?

自分の場合は音に携わることのすべてをやっています。
まずは曲を作る、コンポーズという作業。
それからアレンジ。
レコーディングしたものをミックスといって、
楽器ごとの音の一つひとつのボリュームを1回整え直します。
皆さんが普段聞いているCDはそういったミックスという
音のバランスを整える作業をしてからのものなんですね。
さらにそれが終わったらマスタリングをします。
作った音楽は音量がバラバラなんですよ。
普段手元にあるのはみんな均一なんですけれど、
それはマスタリングという行程を経て、
音のばらつきをうまくあわせて
1つの世界観を作っているからなんです。
今回のアルバムに関しては、ボーカル以外
全部自分1人でやりましたね。


ボーカルの方は自分でお願いする人を探したのですか?

そういうのもあれば、
自分の知り合いの知り合いという人もいます。
それからインターネット上の音楽コミュニティがあって、
そこで出会った人とか、色々ですね。
今回だと自分が好きな曲のボーカルにも参加してもらってます。

そういった交渉もご自身でなされるものなんですか。

その場合もあれば、
A&R(Artist and Repertoireの略。
アーティストの発掘、契約、育成、および広報から制作まで
幅広くアーティストのマネージメントをする
レコード会社の職種の1つ)
というマネージャー的な方がいるのですが、
その人がやってくれることもあります。
自分でやった方が効率的だなと思う場合は
自分でアポをとって依頼しますね。

制作以外のプロモーションはどうなさっていますか。

そこはですね、セールスプロモーターの方に任せています。
プロデューサーというと、どうやって売るかとか、
商品の戦略。例えばタワレコ何店舗でどうのこうの
というのを考える人もいますが、
自分はプロデューサーの中でも、作品自体を総合的に作る側ですね。

いつごろからこういった道に進もうと思っていたのでしょうか?

そうですね、最初音楽を作り始めたのは15、6歳のときでした。
中学生の頃に合唱コンクールとかあるじゃないですか。
憧れがあって、中3の時に僕が指揮者をやってみたんです。
それで、たまたま自分が努力したのがラッキーだったせいか、
指揮者賞をとることができて、こんな自分でもなんかできるんだ
という思い込みから入りましたね。
音楽できるんじゃないか、と。
それがきっかけで、ちょうど手元にパソコンがあって、
曲を作れるソフトもあって、それからですね。
最初は90年代なので小室哲哉さんとかから始まりました。
家でずっとTKのモノマネばかりやって。
そう、モノマネから入りました(笑)。
モノマネして、でも、もっとできそうだなと思って。
バイトで初めて出たお金が10万円くらいだったんですけど、
それを全部音楽の機材に投入しました。
高校生活もつまんないなとか思ってしまって、
高校を中退したんですよ。
それで音楽やりたいと思って、17のときに上京してきました。
それから専門学校に入って勉強して、
自分はプロの道でしっかり進んでいきたいなと思ったんです。

専門学校はどういうコースだったのですか?

ミュージックアーティスト科という名前のコースで、
主にコンピューターミュージックをやるところでした。
自分がアーティストというカタチで色々手をつけてみよう
といった感じで、主に作曲がメインだったんですよ。
それと自分で歌ったり、ドラムやったりなども
カリキュラムの中にありました。

おひとりで作品の中の楽器の演奏をしているのですか?

楽器はね、一応鍵盤なのですが、
あとの楽器は全部挫折しました(笑)。
これからです。まだまだ。
ギターが必要であれば、ギタリストの人に弾いてもらったり、
生のドラムが必要であれば叩いてもらったり、
ボーカル同様、人にお願いしています。
お願いするときに、この人だったらこういう感じにプレイしてるから
この曲にあうんだろうなあとか、人を選ぶっていうか、
そんな良い立場でもないんですけど、人選はやっぱり考えます。

そうすると、多くの人を知っていなければと思うのですが、
どういう場で知り合う人が多いですか。

普通に飲み屋とか。焼鳥屋の隣の人とか。いやほんと(笑)
クラブやライブハウスでは、みんな音楽やっている人なので
話しやすいといえば話しやすいけども、
そういう場だから良い人に出会えるという訳でもないです。
出会う場というのはなかなか分からないもので、
例えば電車の待合室で待っていて、
隣にいる彼の聴いてる曲、流れてくる音楽、
すごく良いな、ちょっと声かけてみようかな、とか。
そんな、色んなところで出会いはあるので、自分が一歩踏み出す
行動力があれば、さらに出会いはありますよ。

すごい。今の本当にあったことなんですか。

いや。…本当っぽく言ってみた(笑)。
でも本当に自分の予期せぬところで良い出会いってありますよ。

自分で自分の作品をプロデュースするということは、
客観的に駄目出しをしてくれる存在がいない
ということになるのでしょうか。

いや、います。
さっきも出たA&Rの方です。
ぼくの、さらにプロデューサーといえばいいんでしょうか。
クリエイターは、やっぱり長時間作っていると
耳が疲れてくるんですね。
まともな判断をするのが難しくなる局面で、
聴いてもらって、こういう感じだというのを伝えて。
そこで、「いや、ここは」と言ってもらうんです。
一晩寝るとわかるんですよ。
やっぱりバランスがおかしかったな、とか。

今、「クリエイター」という言葉が出ましたが、
藤島さんの場合は自身の中に
プロデューサーとクリエイターの両面を持ってらっしゃいますよね。

そう、どっちもありますね。

でもクリエイター1本ではないと思うところは
どういう部分だと思いますか?

どうだろうな…。
昔からこういう観点でやってきたので、
何をどうのこうのとは考えてないのですが、
でも、音楽のことを総合的に考えるというところかなあ…。
例えば自分が作る作品があって、
これを聴いてくれる人はどういう人なのかな、とか。
ちょっとしたマーケティングのことは考えてしまいますね。
こういうのが流行ってるから、こういうのを作ってみようとか
そういうのもありますし、自分が流行に影響されやすいというか
良い意味でも悪い意味でも。
流行をとらえつつ、その次にこういうのが良いんじゃないか
というアプローチもしつつ。

自分の好きな音を出すことに集中するだけではなく、
現状をとらえて考えているということですか?

作品によりけりはあります。
そういうのを重要視しなければいけないものもある。
でも、自分が作りたいなと心底思っているものが、
たまたまその時代感と一致していると自分は思い込んでるんですよ。
思い込み(笑)だから作りたくなる。
なんか…、イコールなんですよね。
最先端のものをやってみたいというのがあって、実験しながら、
色んな価値観を取り入れているかなとは思っています。

今後はセルフプロデュースを続けていくのか、
それとも他の人のプロデュースもやってみようと思っているのでしょうか?

思っていますね。
来年はバンドとかもやってみたいなあと思っていて。
今年にサマソニに2日間行って、
そこで受けた影響が大きくあります。
自分も実力つけて、サマソニ、狙いたいですよ。
そのためにも自分の技術をもっとあげたいですね。
リリースして終わりじゃなくて、そこからが始まりで、
自分のそれまでの意志とは明らかに違う価値観が待っているので
今までだと大体こんなんでいいだろうというスタンスが、
これはこういう風に聴いてもらいたいと妥協がなくなりました。
いつもは何かしらあると思うんですが、
音楽に関しては完璧に、というか、
約束されたクオリティで出す、と。
今回は特に全部自分でやってそう感じました。

最後に、あなたにとってプロデュースとは?

一言でいうと、開拓者だと思います。
色んな分野でもそうだと思いますが、挑戦したり、
その場に一歩踏み込んで行動するということが、
プロデューサーのやるべきことだと思うし、
未知なる領域にも踏み込んでく勇気と努力が
必要なのではないかと思います。


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